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やさぐれ歯科医院

白い天使クリスチャン・ゼル博士を目指す歯科医の戯言

インプラント事故 大学病院編

神奈川歯科大学附属病院で起こったインプラント埋入時の事故です。

症例

79歳男性 既往:高血圧症、アルコール性肝障害、頸動脈硬化症

下顎犬歯部欠損に対し静脈内鎮静下にインプラント埋入開始。

術中は心拍数50~60/分、収縮期血圧110~140 mmHgを推移し安定。

手術開始から55分程経過、インプラント体埋入直後に血圧160/80 mmHgと上昇した。最初は痛み刺激を疑い局所麻酔を追加したが、口腔底部の腫脹を認め院内緊急コール。10分後には奇異呼吸を認め軽鼻エアウェイ挿入。気管挿管が必要と判断し患者をオペ室へ移動。

オペ室へ入室時は心拍数71回/分、血圧187/103 mmHg、SpO2は100%。

口腔内の腫脹は増大し喉頭展開の困難が予想されたため麻酔導入して気管挿管。口腔底の腫脹が著しくそのまま気管切開を施行した。

経過良好で術後12日目に退院。

何故救命できたか

これは早めに対処(気管挿管)できたので救命できたケースです。前も書きましたが、偶発的に起こってしまう事故はある程度しょうがありません。問題はそこからの行動です。

?な部分もありますし「自分だったらああするこうする」とか考えましたが、実際にその場で診ていませんし、きちんと救命できているのであえては書きません。

口腔底出血はとにかく止血と一刻も早い気管挿管しかありません。気管挿管さえできていれば、余程のことがない限り、何とかなります。

今回の症例は、大学病院内で起きたので早急に対処が可能だったというのもラッキーでした。

前に書いたインプラント死亡事故症例の、腫脹に気づいてから主治医が無為無策で無駄に粘り続けて残念な結果となったのは対照的です。

開業医で起きたら・・・

もし開業医で同じ状況が起こったなら、口腔底の腫脹を認めた時点で救急車を呼ぶべきだと思います。救急車を呼ぶのが「恥ずかしい」とか「評判が」とか言ってられません。

必要なのは、「判断力」と「疑わしきは最悪、を想定して動く決断力」です。

窒息すると患者は苦しがって心拍数と血圧がガーッと急上昇しますが、限界を突破すると一気に徐脈になり最終的には心臓が停まります。あれは何度見ても生きた心地が全くしません。

出血による腫脹が増大するほど気管挿管は激ムズ・・・物理的に不可能になっていきますので時間が明暗を分けます。

救急車はどれ位で到着するのか

救急車だって来るまでには時間がかかります。平成25年の消防白書によると平成24年の救急車現場到着時間の平均は8.3分です。つまり、「もうダメだ!」と判断して電話しても10分近くは助けが来ないということです。

目の前でどんどん患者が悪化する10分ってのは永遠のように長く感じますよ。

しかもそこから病院へ搬送するまでにはさらに時間がかかります。通報から病院収容までにかかる時間の平均は38.7分です。救急隊員が気管挿管に成功できればいいですが、そうでなければ病院到着まで打つ手なし。普通に考えて手遅れです。

おまけに救急車が出払っていることすら多々あります。病院勤務の経験がある人なら知っているかもしれませんが、タクシー代わりに救急車使用する人は山のようにいます。詳細書けないのが残念ですが「おおおおおオマエなああああ!」と怒鳴りつけたくなるような理由で救急車使って受診する人達は皆さんの想像以上に多いのです。

結論として

というわけで今回言いたいのは

「一刻も早く救急車を呼ぼう!」

「無駄な救急車使用は止めよう!」

の2点。

救急車とは縁がないのが一番ですが、決断しなければいけない時もあるということです。