やさぐれ歯科医院

白い天使クリスチャン・ゼル博士を目指す歯科医の戯言

歯科業界よくある誤解 「うがい薬 1」

みんな大好き含嗽剤(うがい薬)

歯科の先生達はうがい薬が大好きです。「とりあえずビール」のノリで「とりあえずうがい薬出しますね」な先生が大勢です。抜歯の後や歯周病にとか、もうありとあらゆる場面で出ると言っても過言ではありません。

商品も、ざーっと思いつくだけでも「イソジン」「コンクールF」「ネオステリングリーン」「リステリン」やら「パーフェクトペリオ」のような新興品まで様々です。リステリンだけでも数種類ありますし、こうなると素人には何が違うのかどれが効くのか全くわかりません。

ちなみに僕はここ10年くらいはアズレン系しか出していません。あの綺麗な青いやつです。余談ですがイタリアのサッカーチームはユニフォームが青いんで「青(正確には空色らしい…)(Azzurri)」と呼ばれていますが、Wikipedia先生によるとアズレンはスペイン語の「青(azul)」から来ているそうです。

アズレンは昔はカモミールから抽出していました。ファミレスのドリンクバーにあるアレです。カモミールの和名はカミツレなので、ピーターラビットが飲んでいた「おくすり」もカモミールティーのことです。

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http://ringtonstea.blog.fc2.com/blog-entry-443.html より

 

うがい薬が好きなのは歯科だけではない

先日、某所で看護師さんが「寒くなってきて風邪も流行っているみたいなんで、洗面所にイソジン置きましたから皆さん使ってくださいね」と。用途を聞いたら、エイリアンでも見るような目つきで「・・・うがいに決まってるじゃないですか(意訳:えっ、イソジンよイソジン、あなたイソジン知らないの?洗面所でイソジンっていったら、うがいに決まってんじゃない。なに馬鹿なこと聞いてくんの)」とお答えが。

え、いまどき本気でそんなこと信じているんですか?と思わず言ってしまいました。

 

 風邪予防にうがい?

いやあ、皆さんうがい薬好きですねえ・・・しかしながら感冒(風邪)予防のためのうがいは、うがい薬より水の方がよいって発表があってからもう大分経ちます。

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Prevention of Upper Respiratory Tract Infections by Gargling: A Randomized Trial. Am J Prev Med. 2005

縦軸が風邪にかかった人の割合。横軸が観察日数。上がうがい無し、真ん中がイソジンのようなヨード系うがい、下が水うがい。風邪の定義とか色々曖昧さが残りますが、ヨード系のうがいは見た目はちびっと下がっていますが差がなく、水でうがいすれば発症の確率が40%くらい低下しました。要は普通に水道水でうがいしなさいということです。

 なのでさっきの看護師さんにも「イソジンなんか意味無いですし水道水のほうが効果が高いという研究が・・・」と言ったんですが逆ギレされました。

 では、歯科で処方されるイソジンやネオステリングリーンのような「消毒」「感染予防」を目的に出されるうがい薬はどうかというと・・・昔々、まだ若かりし学生時代に口腔外科の教授室へ「抜歯後の消毒とか含嗽剤って意味あるんですか?」と質問しに行ったら叩きだされました。

まあ結論から言えば意味は無いです。

 

うがい薬を保険から外す?

少し飛びますが昨年末に話題になったのが、診療で含嗽剤「だけ」を処方する場合、保険適応から外すかどうかという話題。 

歯科News & Topicsより

含漱剤の保険適用除外の提案に診療側委員が反発

日本歯科医師会常務理事の堀憲郎氏
「抜歯後や切開、手術といった観血処置の後に含漱剤を単独で処方するケースは少なくない。それらは診断に基づき医学的見地から治療の一環として行われるものである」

イソジンなんかを処方している先生達はこういう外科処置後での「感染予防」って考えで出しているんだと思いますが、ちょっとその摩訶不思議な医学的見地を説明してもらいたいもんです。

僕はイソジンやネオステリングリーンでの含嗽という行為は、医療費削減というより無駄な医療という点で即刻保険適応自体から外すべきだと思っています。保険点数は上がって欲しいですが、無駄な医療に税金が投入されるのはまっぴらごめんです。使いたい先生は個人で患者にあげるか買ってもらって下さい。

理由は次回。